借り入れ場所

会社からお金を借りる従業員貸付制度の特徴は?使える借入理由や審査基準

急な事情でお金が必要になったとき、勤務している会社からお金を借りられます。

会社からの借り入れは「従業員貸付制度」と呼ばれ、会社で働いている人が利用できる制度です。

従業員貸付制度は、銀行や消費者金融といった金融機関から融資を受けるより、10.0~15.0%以上低金利で借りられます。

10万円程度の低額な借り入れから、車・住宅ローン並みの高額融資まで対応している会社も。

しかし従業員貸付制度は、誰でも必ず利用できるわけではありません。

従業員貸付制度を利用できる人や、利用時に気を付けるべきポイントについて紹介します。

目次

従業員貸付制度は会社からお金を借りる福利厚生の一部

従業員貸付制度とは、社員が会社からお金を借りる融資制度です。

融資制度と言っても、金融機関が関係する一般的な融資ではありません。

社員の生活をサポートする目的で会社がお金を貸し付ける、福利厚生の一部です。

そのため、従業員貸付制度の有無は会社のアピールポイントとして求人票に書かれています。

会社によっては求人票に「職員貸付制度」「職員住宅資金貸付制度」と記載されている場合もあります。

従業員貸付制度は、会社によって違う名称で表記されているので注意しましょう。

従業員貸付制度がない会社は利用不可なので別の方法で借りる

働いている会社に従業員貸付制度や準ずる制度がないと、基本的に会社からお金を借りられません。

従業員貸付制度は、有給休暇のように義務付けられている制度ではないため、制度を採用するかは各会社に委ねられます。

会社からお金を借りたい人はまず、自分の会社に従業員貸付制度があるかを確認しましょう。

従業員貸付制度をはじめとした福利厚生の詳細は、会社の社内規定に記載されています。

ただし、規模が大きい会社や創業から長く運営している会社は、社内規定の数が多く見つけにくいです。

自分で探して分からなかった時は、総務部や経理部に確認してください。

従業員貸付制度を担当しているので、制度について詳しく話が聞けます。

会社からお金を借りられないなら、消費者金融からの借り入れも検討しましょう。

従業員貸付制度より金利が高いものの、融資スピードが早く、会社にバレずにお金を借りることが可能です。

従業員貸付制度がない会社はなぜ採用していないの?

従業員貸付制度を採用していない理由は、主に2つ考えられます。

従業員貸付制度がない理由
  • 社員の利用を想定していない
  • 融資するだけの資金源が足りない
社員の利用を想定していない

まず1つ目は、会社側が従業員貸付制度の利用を想定していないときです。

社員が20人以下程度の小規模な会社だと、社長や役員と距離が近いことも多いでしょう。

会社の経営陣が社員一人ひとりの生活状況を把握しやすいため、貸付制度の必要性がないと判断し、採用しない場合があります。

筆者が勤務していた会社に従業員貸付制度の扱いを聞いたところ、「必要性を感じなかったので採用していない」と返答がありました。

経営陣の判断により、会社からお金を借りる人はいない想定で、制度を準備していない会社もあります。

融資するだけの資金源が足りない

2つ目の理由は、社員に融資する資金源がないときです。

従業員貸付制度によって貸し付けるお金の資金源は、会社の資金です。

会社を運営する資金や人件費を除いて、余っている資金からの貸し付けとなります。

そのため、会社の資金に余裕がないと、貸付用のお金を工面できません。

従業員貸付制度を採用するなら、社員すべてが平等に利用できる必要があります。

全員が制度を利用しても問題ない資金が必要なので、資金的に余裕のある会社でなければなりません。

以上2つの理由から、特に中小企業は従業員貸付制度を採用していない場合があります。

従業員貸付制度と給料の前借りは資金源や仕組みが違う

従業員貸付制度と同じく、会社からお金を受け取る方法として、給料の前借りがあります。

どちらも給与以外のタイミングでお金を受け取る方法ですが、仕組みは大きく違います。

分かりやすく、従業員貸付制度と前借りの違いをまとめた内容が以下の通りです。

従業員貸付制度 給料の前借り
資金源 会社の資金 利用者の給料
利用できる人 社員のみ
※会社による
勤務している人すべて
制度の扱い 福利厚生なので、有無は会社による 労働基準法で定められており、必ずある
受け取れる金額 10~1,000万円
※会社による
前回の給料日から働いた日数分の給料
審査の有無 社内審査あり 事情が認められれば借入可能
返済の有無 必要 不要

まず大きな違いは、受け取るお金の扱いです。

従業員貸付制度は、給料と別に会社の資金からお金を借りるので、借入以降の給料に影響がありません。

給料の前借りは、本来給料日に受け取る予定だったお金を先にもらっているだけなので、給料日に残りの金額しか受け取れません。

従業員貸付制度を利用した場合と給料の前借りで、それぞれ10万円を借りた場合の受取額や次回の給料日にもらえる金額を以下の表にまとめてみました。

従業員貸付制度 給料の前借り
制度を利用して受け取った金額 10万円 10万円
本来の給料 25万円 25万円
翌月の給料日にもらえる給料 25万円 15万円

従業員貸付制度で受け取ったお金は、いずれ返済する必要があります。

しかし前借りで受け取ったお金はもともと自分の収入なので、返済する必要はありません。

また、給料の前借りは受け取れる金額が限られています。

前借りで受け取れる金額は、前回の給料日から前借りを申請した日までに働いた日数分の給料のみです。
参考:労働基準法

例えば日給1万円の仕事をしている人がいるとします。

前回の給料日から10日後に前借りを申請したら、受け取れる金額は最大10万円までです。

働いていない分の給料は前借りできないので注意しましょう。

給料の前借りはすべての労働者に認められている権利です。

従業員貸付制度と違い、どの会社でも利用できるので覚えておきましょう。

ただし、前借りは給料日に受け取れる金額が減ってしまうので、慢性的にお金が不足し続けるおそれもあります。

前借りが当たり前になると、生活が立ち行かなくなる可能性も。

給料の前借りが常習化するなら、最初から消費者金融の利用がおすすめです。

例えば先程の例で言うと、給料25万円の人が10万円前借りしたら、次の給料日に受け取れるお金は残りの15万円のみです。

前借りした10万円を給料日までに使ってしまったとすると、さらに次の給料日まで1ヶ月間、15万円で生活しなければなりません。

従業員貸付制度がなくて困っている人は、前借りだけでなく、金融機関からの借り入れも併せて検討しましょう。

従業員貸付制度は利用できる人が限られている!具体的な利用条件は?

従業員貸付制度が利用できる会社でも、勤務しているすべての人が借りられるわけではありません。

従業員貸付制度を利用できる条件はいくつかあるので、事前に確認しておきましょう。

金利の扱いや借入理由については、申請前にチェックしてください。

従業員貸付制度で知っておくべき利用条件やポイントは以下の通りです。

従業員貸付制度のポイント

  • 従業員貸付制度は正社員しか利用できない
  • 緊急性が高い理由でしか借りられない
  • 借りられる金額は10~100万円が基本
  • 適用される金利は1.0~4.3%以下
  • 返済は給料からの天引きで行われる

会社からお金を借りられるのは正社員のみに限っている場合がほとんど

従業員貸付制度は、正社員しか利用できない場合が多いです。

パートやアルバイトは返済期間中に退職するリスクが高いため、貸付対象になりません。

従業員貸付制度は福利厚生の一環なので、仕事をやめたとき、借りていたお金を一括返還しなければなりません。

返済が残っている状態で退職し、一括返済ができずに逃げられると、貸したお金を踏み倒されてしまいます。

踏み倒す人の数が多いと社内の資金が減るため、会社にとっても悪影響です。

正社員はある程度収入が安定しており、長く勤務するメリットがあるので、退職のリスクが低いです。

しかしパートやアルバイトは、正社員より気軽に仕事をやめられます。

踏み倒されるリスクを避けるため、貸し付けを正社員に限定しています。

消費者金融ならパートやアルバイトでも貸付の対象としているので、アイフルやプロミスの審査にも申し込みが可能です。

派遣社員は働いている企業の従業員貸付制度を利用できない?

派遣社員の雇用元は勤務先の会社ではなく、派遣会社です。

勤務先の会社に従業員貸付制度があっても、勤務先の制度は利用できません。

派遣社員は、雇用されている派遣会社に従業員貸付制度がないかを確認してください。

会社からお金を借りる理由は緊急性が高いものしか認められない

従業員貸付制度で借りたお金は、使い道が決められています。

基本的に緊急性が高い目的や、まとまったお金が必要だと認められる目的にしか利用できません。

従業員貸付制度を使える借入理由の具体例は以下の通りです。

従業員貸付制度を使える資金使徒

  • 冠婚葬祭
  • 介護や医療にかかる費用
  • 災害による復旧費用、災害を受けた後の生活費
  • 犯罪による復旧費用、犯罪に遭遇した後の生活費
  • 引越し費用
  • 生活費

従業員貸付制度で認められる資金使途も、会社によって異なります。

例えば冠婚葬祭において、結婚式の費用は「緊急性がない」と判断され利用できない会社もあります。

また、会社として給料は支払っているので、生活費目的での利用を認められないケースも。

どの会社でも、娯楽やギャンブル目的での借り入れはできません。

旅行費用も認められないので、娯楽目的の借り入れは避けてください。

中には、ギャンブルや趣味が原因で生活費が不足し、従業員貸付制度の利用を検討している人もいるでしょう。

嘘の理由を述べたり言い訳を用意して申し込もうとしている人は、注意が必要です。

従業員貸付制度は、申込時に記入した理由でお金を使ったか確認するために、見積書や領収書の提出を求められます。

「引越し費用に使う」と嘘をついて申し込んだら、引っ越し業者の見積書や引っ越しの初期費用を証明する書類が必要です。

申込理由の嘘がバレると社内規定違反となり、一括返済を求められるリスクがあります。

従業員貸付制度は会社ごとに定められた資金使途の範囲内で、適切に利用してください。

従業員貸付制度で借りられる金額は10~100万円程度が基本

従業員貸付制度で借りられる金額は、およそ10~100万円ほどです。

消費者金融や銀行のように、数百万円規模の借り入れはできないので注意しましょう。

借入金額も会社によって違いますが、勤続年数によって借りられる金額が変わります。

勤続年数が長いほど借入上限金額が高くなります。

勤続年数 借入上限金額
5年未満 10万円
5~10年未満 20万円
10~15年未満 30万円
15~20年未満 50万円
20~30年未満 70万円
30年以上 100万円

※一例として、当サイトが作成した基準です

会社によっては社員の役職ごとに借入金額が決められている場合もあります。

勤続年数にかかわらず、一般社員は10万円までしか借りられない可能性も。

借入金額の決め方は従業員貸付制度に関する社内規定に書かれているので、自分が借りられる金額を確認しておきましょう。

また、従業員貸付制度で借りたお金は、総量規制の対象外となります。

総量規制とは?

お金の貸しすぎを防ぐため、借りられる金額を年収の3分の1までとする貸金業法の一部。

従業員貸付制度は福利厚生であり、貸金業者からの借り入れではありません。

貸金業法が適用されない金銭のやりとりなので、総量規制を超えた借り入れも認められます。

車や住宅を購入するため従業員貸付制度を利用できる会社もある

車や住宅を購入するための高額ローンを用意している会社もあります。

従業員貸付制度は会社の資金源に依存するため、資金が豊富な会社では貸し付けできる金額も高くなる傾向です。

住宅や車の購入は生活の充実を目的とした理由であり、緊急性はありません。

そのため従業員貸付制度を利用できない会社もありますが、積極的に融資してくれる会社もあります。

住宅や車の購入に関する会社からの借り入れは、主に以下の2種類に分けられます。

直接融資 従業員貸付制度を利用して、住宅や車の購入を目的とした高額融資を行う
利子補給 会社と提携した金融機関が貸し付けを行い、会社は利息の一部を補助する

従業員貸付制度で高額融資ができなくても、住宅ローンやマイカーローンの利息を補助してくれる制度があります。

福利厚生として利子補助のみ採用している会社もあるので、住宅や車の購入を検討しているなら併せて確認してください。

従業員貸付制度で借りたお金の金利は1.0~4.3%以下と決められている

従業員貸付制度を利用して会社からお金を借りたときも、利息を支払わなければなりません。

従業員貸付制度の金利は、国税庁において以下のように定められています。

貸付期間 金利
平成22年~25年 4.3%
平成26年 1.9%
平成27年~28年 1.8%
平成29年 1.7%
平成30年~令和2年 1.6%
令和3年~ 1.0%

参照:金銭を貸し付けたとき|国税庁

今から従業員貸付制度を利用すると、適用される金利は最大でも1.0%です。

各金融機関で借りたときと比べると、利息を大幅に減らせるメリットがあります。

一例として、消費者金融や銀行で支払う利息と、従業員貸付制度の利息を比較してみましょう。

例)10万円を10ヶ月借りたときの利息

適用金利 支払う利息(合計)
従業員貸付制度 1.0% 約1,500円
アイフル(消費者金融) 18.0% 約8,400円
バンクイック(銀行カードローン) 14.6% 約6,800円

参考:返済シミュレーション|アイフル
返済シミュレーション|バンクイック

消費者金融は約8,400円、銀行カードローンは約6,800円も利息が必要です。

従業員貸付制度は同じ期間、同じ金額を借りても利息はたった1,500円。

5,000円以上支払う利息を減らせるのは大きなメリットです。

借入金額が増えれば支払う利息も増えるため、より負担を減らせます。

従業員貸付制度の金利は変動する可能性もありますが、金融機関で借りるより低く済むでしょう。

従業員貸付制度の金利が他の借入方法と比べて低いのは、利益を目的とした貸し付けでないからです。

銀行や消費者金融は、利息による利益を目的としてお金を貸しています。

しかし従業員貸付制度は会社に勤務する社員の生活をサポートするための制度。

利息を通して利益を得る必要がないため、必要最低限の金利しか付与されていません。

従業員貸付制度が無利息で借りられないのは余計な税金を取られないため

従業員貸付制度が利息をつけているのは、税金対策のためです。

利益を得る必要がないなら、利息なしで貸し付けるのが1番。

しかし会社が個人に対して無利息でお金を貸すと、「給与」と判断される可能性があります。

会社から給与を受け取ると、必ず所得税を支払わなければなりません。

従業員貸付制度はあくまで貸し付けなので、受け取ったお金を返す義務があります。

さらに所得税が引かれてしまうと、結果的に大きなマイナスです。

所得税で引かれる金額は人によりますが、10万円借りると2,000~3,000円ほどマイナスされる可能性があります。

少しでも利息を付けておくと、「利息があるので給与ではなく、貸し付けである」と証明できます。

給与と間違われ、不必要な税金を引かれないためにも、少しの利息は必要経費だと思って支払いましょう。

会社の好意で無利息にしてもらえるとしても、所得税のリスクを考えて1.0%だけでも利息をつけてもらうのがおすすめです。

また、法人から個人へお金を渡すとき、贈与税はかかりません。

贈与税は個人から資産を受け取る際に必要な税金なので、回避する必要があるのは所得税のみです。

従業員貸付制度の返済は給料から天引きされるので返済忘れの心配がない

従業員貸付制度で借りたお金の返済方法は主に以下の2つです。

  • 給料から天引きされる
  • 給与振込口座から引き落とされる

いずれも利用者が毎月手続きを行う必要がなく、自動で返済可能。

返済を忘れるリスクがないため、滞納によるトラブルを避けられます。

給料から天引きされる返済方法なら、毎月の給与振り込みの段階で、返済分を差し引かれた金額が振り込まれます。

「給料を受け取ったあと使い込んでしまい返済分のお金がない」といったトラブルも事前に回避可能です。

返済方法は会社によって違いますが、可能であれば給料からの天引きを選択しましょう。

会社からお金を借りる際の審査は会社内で完結する!主にチェックされる審査基準

従業員貸付制度は福利厚生の一部ですが、利用時には基本的に審査が行われます。

金融機関を通さない社内での貸し付けとは言え、お金が関わる問題です。

貸したお金を返済できる人か、本当に貸し付けが必要な状況か、客観的な視点から判断しなければなりません。

従業員貸付制度の審査基準は会社によって違います。

審査自体も外部の金融機関に委託するわけではなく、社内の担当部署が実施します。

従業員貸付制度の審査における特徴は主に以下の2点です。

従業員貸付制度審査の特徴

  • 人事評価や勤務態度が重視される
  • 信用情報機関への照会は行われない

従業員貸付制度の審査で重視されるのは勤務態度や人事評価

従業員貸付制度の審査では、申込者の社内評価が大きく影響します。

審査で特に重視されるのは、社内での勤務態度や人事評価です。

基準は会社ごとに違いますが、主に以下の社内評価をチェックして、貸し付けに値する人物かを判断します。

  • 意欲的に仕事をしている
  • 上司や同僚からトラブルの報告がない
  • 無断遅刻、無断欠席がない
  • 勤務態度が悪くない(居眠りやサボり等がない)

審査をする総務部や経理部、審査時に情報を提供する人事部に悪い評価が広がっていると、借り入れしにくいでしょう。

大きなトラブルなく真面目に仕事をしている人なら、社内審査で悪い評価は受けません。

他の金融機関において審査落ちする人でも、社内評価が高ければ従業員貸付制度を利用できます。

消費者金融や銀行カードローンから借りるとき、審査では以下のポイントを重視されます。

  • 働いており、安定した収入がある
  • 他社借入の件数や金額が多すぎない
  • 返済や各種支払いを滞納していない

従業員貸付制度は会社に勤務している人しか利用できない制度。

つまり申し込む段階で仕事があり、安定した収入を得ている保証があります。

従業員貸付制度は給料から天引で返済されるため、返済を滞納する心配がありません。

会社でお金を借りるなら、年収の金額や他社借入の有無を確認するより、社内評価を上げておきましょう。

審査は社内で完結するので信用情報機関への照会を行わない

従業員貸付制度の審査は、制度を管理している総務部または経理部の担当者が審査を行います。

審査にあたり、社外の金融機関を利用するケースはほぼありません。

また、従業員貸付制度の審査は信用情報機関を利用しないのも大きなポイントです。

信用情報機関とは、他社借入やクレジットカードの利用状況といった、お金に関する情報を管理している機関。

金融機関のカードローンは通常、情報信用機関を通して金銭トラブルの有無を確認します。

金銭トラブルが多い人への貸し付けは、返済の延滞や貸し倒れのリスクを抱えているからです。

しかし、従業員貸付制度は給料からの天引きでほぼ確実に返済できるため、社外の金融トラブルを確認する必要がありません。

信用情報を理由に審査落ちしないのは、従業員貸付制度ならではの大きなメリットです。

また、信用情報機関を確認されなければ、他社借入もバレません。

すでに他社借入があることを会社に隠したい人も利用しやすいでしょう。

従業員貸付制度は金融機関から借りるより審査に通りやすい傾向がある

従業員貸付制度は福利厚生であり、審査基準も申込者の人物像を重視します。

そのため、収入や金銭トラブルの有無を詳しくチェックする一般のカードローンより、審査通過しやすい傾向です。

社内評価に問題がなければ借りられるので、カードローンの審査に落ちた人でも審査通過は難しくありません。

「銀行では借りられなかったけれど従業員貸付制度なら審査に通った」と考えると、審査通過しやすいと感じます。

カードローンの審査に落ちて自信がない人も、従業員貸付制度に申し込んでみましょう。

社員をサポートする目的で用意されている制度なので、利用できる可能性が高いです。

ただし、正社員であれば必ずしも借りられるわけではありません。

社内評価が悪いと、審査に落とされてしまいます。

従業員貸付制度を利用する前に、自分の勤務態度に問題がないか、要チェックです。

また審査には数日から数週間かかる場合があり、会社の営業日にしか対応してくれません。

会社の休業日や夜間に借りたいなら、従業員貸付制度以外の方法を検討しましょう。

コンビニATMでお金を借りるには?24時間対応で急な出費に便利」では、コンビニでお金を借りる方法を紹介しているので、時間や日にちを気にせず借りたい人は参考にしてみてください。

実際に会社からお金を借りる際の手続きと必要書類を事前に確認しておこう

従業員貸付制度の申し込みは、社内の担当部署で行います。

福利厚生に関する申請なので総務部、または経理部が担当しています。

社内規定に担当部署が記載されていたら、社内規定に沿った担当部署に連絡しましょう。

従業員貸付制度を利用する流れは、具体的に以下の通りです。

①上司に従業員貸付制度の利用許可を取る

会社によって、従業員貸付制度を利用するために上司の許可が必要な場合もあります。

担当窓口に繋いでくれる可能性が高いので、従業員貸付制度を利用する時はまず上司に相談しましょう。

上司に会社からお金を借りると知られたくない人は、一度担当部署に相談してください。

上司の許可が必要か、担当部署で事前に確認してもらえます。

②担当部署で手続きを開始する

従業員貸付制度の管理を担当している部署に、「制度を利用したい」と伝えましょう。

担当者から申し込みに必要な書類を渡されるので、申込書類に必要事項を記入してください。

担当部署の指示に従い、手続きを進めてください。

③社内審査の結果を待つ

申込書類と必要書類を提出したら、社内審査が始まります。

社内審査は1~2週間ほどかかるため、結果が分かるまで待ちましょう。

社内審査の結果は、社内メールまたは担当部署に呼び出され、口頭で伝えられます。

④契約内容を確認し、お金を受け取る

審査に通過したら、お金を振り込む手続きが取られます。

担当部署で借入内容の確認を行い、問題がなければ口座振込での融資を受けてください。

振込日は会社によって違うので、担当部署に確認しましょう。

借入金は一括で振り込まれるため、数万円ずつ必要なタイミングでの都度借り入れはできません。

従業員貸付制度を利用する際に準備しておく書類は4つ

従業員貸付制度を利用する際、提出を求められる書類は主に以下の通りです。

  • 申込書
  • 見積書または領収書
  • 借用書
  • 本人の印鑑
従業員貸付制度の申込書

制度の利用を担当部署に申告した時に渡される申込書です。

個人情報や借入理由などを細かく記入します。

嘘をついて提出すると審査に落ちたり、借りたあとに一括返済を求められるので、必ず正しい情報を記入してください。

見積書または領収書

申込書に記入した理由で借入金を使ったか確認するため、提出を求められます。

「介護用品を購入する」と嘘をついてギャンブル用のお金を借りるといったトラブルを避ける目的で、提出しなければなりません。

お金の使い道が分かればいいので、申込時に用意できる書類を持っていきましょう。

虚偽申込を防ぐため、発行後一定期間が経過した領収書や見積書は受け付けてもらえない可能性が高いです。

「3か月以内に発行した見積書や領収書」と決められている会社もあるので、申込時に確認してください。

借用書

借用書は、お金の貸し借りがあった事実を証明する書類です。

返済を義務付けるためだけでなく、「給与ではなく貸し付けである」と証明するためにも用いられます。

会社からお金を借りるとき、「金銭貸借契約書」という書類を提出します。

内容は借用書とほぼ同じですが、公的な書類となるため求められたら必ず提出してください。

会社からお金を借りる際に必要な金銭貸借契約書の準備方法

従業員貸付制度を利用する際に提出する金銭貸借契約書は、記載する内容が決まっています。

会社側でテンプレートを用意しているなら、テンプレートに沿った内容で書類を作成してください。

自分で用意しなければならないとき、記載する内容は主に以下の通りです。

  • 「金銭貸借契約書」とタイトルに書く
  • 書類を作成した日付
  • 借入金額
  • 「会社からお金を借りた」と事実を記載する
  • 借入金の返済方法
  • 借入金の返済期日
  • 自分の名前、住所、印鑑
  • 連帯保証人の名前、住所、印鑑
  • 会社名、会社の住所

金銭貸借契約書は契約を証明する書類なので、収入印紙の貼付けが必要です。

従業員貸付制度での借入金額は最大でも100万円程度。

100万円以下の借り入れに必要な収入印紙は200円~1,000円です。

借入金額によって変わるので、自分の借入金額に合わせて収入印紙を用意しましょう。

会社からお金を借りるときに考えられるトラブルは?注意点は事前に確認しておこう

従業員貸付制度を利用する際、思わぬタイミングでトラブルが起きることもあります。

社内で完結する制度なので、会社での評価に影響する可能性も。

従業員貸付制度が抱えているリスクについて、申込前に確認しておきましょう。

  • 返済期限は1~5年程度
  • 退職時に返済が残っていると一括返還が求められる
  • 上司や同僚に黙って借りられない場合がある
  • 返済を滞納すると社内評価に影響がある

従業員貸付制度の返済期間は1~5年!返済前に退職すると一括返済が求められる

従業員貸付制度で借りたお金は、最大でも5年以内に返済する必要があります。

返済期限は会社によって違うので、申請前に必ず確認してください。

中には、借り入れから1年以内に返済しなければならない会社もあります。

例えば会社から30万円借り、1年以内に返済すると、1ヶ月あたりの返済金額は25,000円です。

毎月の給与から25,000円ずつ返済に充てる必要があるので、生活に影響が出る可能性もあります。

返済期限をもとに、無理のない借り入れでないかを事前にシミュレーションしましょう。

シミュレーション方法

  1. 利息を計算する
    利息=借入金額×金利(年利)÷365×借入日数
  2. 毎月の支払い金額を算出する
    毎月の支払金額=(借入金額+利息)÷借入月数

例)20万円を年利1.0%、2年で返済する

  1. 利息
    200,000円×0.01÷365×730=4,000円
  2. 毎月の支払金額
    (200,000円+4,000円)÷24=8,500円

また、従業員貸付制度は退職時に返済が残っていると、一括返還しなければなりません。

従業員貸付制度は会社の福利厚生であり、退職すると利用する権利がなくなるからです。

退職を検討している人は、退職までに返済できる金額のみ借りるか、利用しないのがおすすめです。

退職をしたい上にどうしてもお金が必要なら、消費者金融や銀行カードローンの利用を検討してください。

上司や同僚に知られず借りるのは難しい場合がある

従業員貸付制度は、社内の誰にもバレずに利用するのは難しいと考えてください。

借り入れの有無は個人情報となるため、担当した部署の人が誰かに告知することはありません。

しかし、噂程度に広まる可能性はあります。

上司の許可が必要な会社では、隠したくても必ず報告しなければならないため、内緒で利用するのは難しいです。

また、従業員貸付制度の担当部署に所属している人は、同僚に知られる可能性が高いでしょう。

社内の誰にもバレずに借り入れしたいなら、カードローンを利用してください。

消費者金融カードローンでは、在籍確認の連絡が原則ない、電話は個人名でかける、郵送物がないなど、周囲にバレない工夫をしてくれます。

ただし従業員貸付制度より金利が高いため、金利とバレにくさのどちらを優先するか、よく考えて利用してください。

返済を滞納すると社内評価や人間関係に悪影響が出る

従業員貸付制度を利用するだけでは、社内の人事評価に大きな影響はありません。

福利厚生制度を利用しているだけで、社内の誰でも権利があるからです。

ただし、返済を滞納すると社内評価に悪影響を及ぼします。

「お金の管理ができない」「責任感がない」と判断されてしまうため、仕事の評価も下げられます。

また、従業員貸付制度でトラブルを起こしたら、人間関係も悪影響が出る可能性も。

お金にルーズな人だと思われ、距離を取られる、仕事がスムーズでなくなる等のトラブルが考えられます。

社内評価を下げないためにも、滞納せず期限を守って返済しましょう。

社長や役員が会社からお金を借りる際の注意点は?

一般社員だけでなく、社長や役員も会社からお金を借りられます。

会社を運営している立場でも、会社の資金は社長や役員のお金とは別扱いです。

あくまでも会社の資金から借り入れるので、書類を用意して手続きを行ってください。

社長や役員が会社からお金を借りるときは、役員貸付金として扱われます。

役員貸付金も、従業員貸付制度と同様にいくつか注意点があります。

社長や役員がお金を借りるときの注意点

  • 社長が会社から借りると銀行融資を受けにくくなる
  • 役員貸付金を返済できないと法人税が上がる

社長が会社からお金を借りると会社自体が融資を受けにくくなる

社長が会社からお金を借りる際、会社自体に影響が出る可能性もあります。

本来一般社員より報酬が多い傾向の社長がお金を借りると、会社の経営がうまくいっていないと判断されかねません。

会社の経営状況が悪いと、銀行から事業資金を融資してもらえなくなります。

社長が何度も会社からお金を借りる、一度の借入金額が高いときは注意が必要です。

銀行から事業資金の融資を受ける予定があるなら、社長や役員が会社から借り入れするのは避けましょう。

社長が会社から借りたお金を返済できないと法人税が増える

役員貸付金を利用すると、法人税が上がるリスクも高くなります。

役員貸付金は貸し付けなので、基本的に利息が発生します。

会社では利息分も利益として計上しなければならないため、利息による収益が増えると法人税も上る可能性が高いです。

利息による収益を避ける目的で無利息の貸し付けにすると、役員給与とみなされる可能性があります。

給与として判断されると、所得税の支払いが必要です。

また、役員貸付金を返済しきれず債権放棄すると、役員賞与と判断される可能性があります。

役員賞与が増えると法人税も上がるので、社長や役員が会社からお金を借りる際は十分に注意してください。